宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

世界−人類−日本、皆が幸福になる知を探究します。

銃と平和3 -危険な世界と安全大国・日本-

銃を考える背景は、現実の世界が危険だからです。ここでは、世界がいかに危険であるか、反対に、日本がいかに安全であるかを、ふたつの統計を通して理解してみたいと思います。ひとつは、イギリスのエコノミスト誌が調査した「国家平和度指数」で、戦争やテロの危険レベルを基準に、諸国における平和度・危険度を調査した統計。もうひとつは、グローバルノートが国連の犯罪調査統計をもとにまとめた、諸国の「殺人犠牲者数」です。






1.国家平和度指数 (英国・エコノミスト誌)



今日、日本は、他国による脅威を免れ易く、治安は良好で、平和な社会を維持していることは、次のような調査結果から分かります。イギリスのエコノミスト誌が、2018年、暴力、犯罪、軍事力、戦争などの24項目にわたって、163カ国を対象に分析し、各国がどのくらい平和かを数値化した、平和度指数ランキングです。1位から10位までは青で示し、それ以下は、主要国をのみを挙げ、特に重要だと思われる国は赤で示しました。




1位.アイスランド


2位.ニュージーランド


3位. ポルトガル


4位.オーストリア


5位.デンマーク


6位.カナダ


7位.シンガポール


8位.スロベニア


9位.日本


10位.チェコ


11位.スイス


12位.アイルランド


22位.ドイツ


36位.台湾


39位.イタリア


41位.インドネシア


45位.イギリス


55位.韓国


60位.フランス


110位.中国


116位.ブラジル


128位.アメリカ


136位.エジプト


139位.イラン


140位.メキシコ


141位.インド


142位.パレスチナ


146位.イスラエル


148位.ナイジェリア


149位.北朝鮮


150位.ウクライナ


154位.ロシア


159位.イラク


160位.イエメン


161位.南スーダン


162位.シリア


163位.アフガニスタン   -最下位




2007年から行われている同調査では、日本は常に10位圏に入る平和度を達成しています。この統計の特徴は、軍事費や軍人の数、武器輸出額が多い国は、平和な状態でないとカウントされます。一国において、軍備が必要ない平和な状態を評価します。ですから、世界の警察官として、他国の安全のために巨額の軍事費を支出しているアメリカの平和度は低くなります。また、中国や北朝鮮など、拡張政策や挑発をおこなう国家であっても、その対外姿勢だけでは大きく危険要素とカウントされません。






このランキングを、国際政治的観点から理解するために、第2次世界大戦で戦った参戦国の平和度を見てみましょう。これら諸国は、現在も世界に大きな影響を及ぼしている国々です。まず、連合国側は、アメリカ128位、イギリス45位、フランス60位、ロシア(ソ連)154位、中国110位です。


枢軸国側は、ドイツ22位、イタリア39位、そして日本9位です。日本は、先の大戦に参戦した8カ国のなかで、ずば抜けて平和度が高い国になっています。







その他、人口大国・経済的強国、また、戦略的要衝にある国を挙げてみましょう。平和度が高い順から、台湾36位、インドネシア41位、韓国55位、ブラジル116位、南アフリカ127位、エジプト136位、イラン139位、メキシコ140位、インド141位、イスラエル146位、ナイジェリア148位、北朝鮮149位、トルコ152位などです。また、平和度が最下位の5カ国は、159位イラク、160位イエメン、161南スーダン、162位シリア、163位アフガニスタンで、みな紛争中の国家です。







最も平和度が高い国の1位から10位まで、日本以外の国家は、いわゆる大国ではありません。6位のカナダは、経済はGDP11位ですが、人口38位、3千7百万人で、大国ということはできません。日本はGDP3位、人口11位、1億2千万人の人口大国です。このような大国が、平和度で10位以内にいることは極めて特別なことです。また、日本は、アメリカの軍事的重要拠点で、日本の基地がなければ、アメリカ軍は、極東から中東まで、アジアでの作戦は遂行できません。こんな戦略的要衝にある国が平和度が高いことは、国際政治の奇跡ともいえます。






一方で、この統計は、中国と北朝鮮の脅威を過小評価しています。2017年、アメリカと北朝鮮が、核とミサイル問題をめぐり、一触即発の状態になったとき、北朝鮮、中国、韓国、日本などが位置する東アジアは、世界でもっとも危険な地域になりました。日本には米軍基地があるのですから北朝鮮の攻撃目標になります。






中国は昨年、香港の自由を求める市民に対し、暴力的に弾圧した無法国家ともいえます。南シナ海や尖閣諸島も侵略しようと策動しています。そんな中国が110位にランクされていますが、128位のアメリカや、140位のメキシコより安全度が高いといえるでしょうか。この調査は、危険な思想をもつ全体主義国家に甘いものになっています。






この調査から分かることは、日本は9番目に平和な国ですが、世界には日本より危険な国が153カ国もあるという国際社会の厳しい現実です。すなわち、世界は危険なのです。日本は恐ろしい荒波に浮かぶ平和な国で、アメリカという世界最強の国家に守られ、海洋国家という地政学的条件に守られた国なのです。






日本人が国防意識が極端に薄いのはこのような現実も作用しているでしょう。しかし、世界の危険な現実はしっかり認識しておかなければなりません。2017年、私たちは、北朝鮮の弾道ミサイルを警戒しましたが、本来、この警戒は解くことなく、常に持たなければならないものです。





2.世界殺人犠牲者数 (10万人中)



この統計は、世界の諸問題についての統計を発表している、グローバルノートが、2017年における、世界194カ国を対象に、人口10万人あたりの殺人被害者数を、国連の統計をもとにランキングしたものです。これは、殺人という、犯罪のなかでも最も深刻な事案の現状を示すもので、各国の社会的危険度を示す的確な指標になります。 


 

1位.(61.71)エルサルバドル


2位.(59.56)ベネズエラ


3位.(56.39)ジャマイカ


4位.(49.27)米領ヴァージン諸島


5位.(43.56)レソト


6位.(40.98)ホンジュラス


7位.(37.79)ベリーズ


8位.(36.54)セントビンセント・グレナディーン


9位.(36.08)セントクリストファー・ネイビス


10位.(35.67)南アフリカ


12位.(30.74)ブラジル


19位.(25.71)メキシコ


40位.(9.13)ロシア


42位.(8.39)フィリピン


54位.(6.18)ウクライナ


65位.(5.32)アメリカ


73位.(4.31)トルコ


82位.(3.23)タイ


83位.(3.22)インド


88位.(2.55)エジプト


89位.(2.50)イラン


101位.(2.13)マレーシア


109位.(1.80)カナダ


112位.(1.69)ベルギー


118位.(1.38)イスラエル


121位.(1.27)フランス


126位.(1.24)デンマーク


127位.(1.20)イギリス


129位.(1.14)スウェーデン


134位.(0.98)ドイツ


139位.(0.90)アイスランド


141位.(0.83)オーストラリア


142位.(0.82)台湾


146位.(0.74)ニュージーランド


147位.(0.74)ポルトガル


150位.(0.66)イタリア


152位.(0.65)オーストリア


153位.(0.62)チェコ


155位.(0.59)韓国


156位.(0.56)中国


157位.(0.53)スイス


158位.(0.53)ノルウェー


166位.(0.33)香港


167位.(0.32)マカオ


168位.(0.24)日本


169位.(0.19)シンガポール


170位.(0.00)バチカン


→ 以下は194位まで殺人被害者なし



上の統計をもとに、まず、日本がどれほど殺人事件が少ない国か、考えてみましょう。日本は、168位で、10万人あたりの殺人犠牲者数は、0.24人です。日本より少ない国は、169位のシンガポールで、0.19人です。シンガポールは金融、技術、貿易、観光などにおいて高いレベルをもち、世界で最もすみやすい都市といわれますが、560万人で人口においては小国です。次の170位はローマ教皇庁がある、人口わずか809人のバチカンで、殺人被害者は「0」です。そこから194位まではリヒテンシュタインやモナコなど人口小国で、全て「0」です。すなわち、1億2千万の人口大国である日本が、シンガポールの次に殺人被害にあう確率が少ない国家なのです。





反対に、1位のエルサルバドルは10万人中61.71人で、殺人被害者になる確率は、なんと日本の246倍空恐ろしい数字です。人口大国であるブラジルは12位で30.74人、日本の128倍、ロシアは40位、9.13人で38、アメリカは65位で5.32人、22倍です。同じ島国で国民性も似ているといわれるイギリスは、127位で1.20人、日本の5倍です。韓国は155位で0.59人、2.4倍です。韓国も155位と危険度が低い国ですが、それでも、日本より倍以上、殺人被害者になる確率が高いのです。





これらの数字がいかに恐ろしいものでしょうか。日本も毎日のように殺人事件のニュースが伝えられます。日本の殺人被害者は年間895人ですから、1日に平均2人以上殺人事件が発生します。私たちは殺人のニュースに触れるたびに少なからぬ恐怖を感じます。自分や家族が殺人被害にあうかも知れないと心配します。世界で例外的に殺人事件が少ない日本ですら、殺人の危険を感じるのです。




ところが、アメリカはどうでしょうか、年間17250人殺人犠牲者が出て、平均1日に47件の殺人事件があるのです。もはや、すべての事件を報道することもできません。ブラジルに至っては、年間61283人、1日に167人殺害され、1か月で5000人です。こうなれば、あちこちで頻繁に殺人事件が発生するというレベルです。どんなに恐ろしい社会でしょうか。





一方、中国は、多くのウィグル人を強制収容し、その数は200万人におよぶと伝えられます。その中には殺害される人も少なくありません。中国はまさに国家そのものがテロ集団なのです。中国共産党が無法に殺す国民の数をカウントすれば、殺人犠牲者数の上位圏入るでしょう。






3.映画「セントラルステーション」にあらわれたブラジル社会の危険な現実



ブラジルは、諸国で12番目に殺人発生率が高く、年間、6万人余りの殺人犠牲者が発生します。ブラジルの現実を、世界的に話題になった映画から考えてみます。1998年に制作されたブラジル映画「セントラルステーション」は、ベルリン映画祭でグランプリ賞、アメリカ、ゴールデングローブ・最優秀外国語映画賞など、各国で多くの賞を受賞しました。この映画は高い作品性とともに、ブラジル社会の現実を映し出した内容で、世界に衝撃を与えました。





ストーリーは、元教師、初老の女性ドーラは、リオデジャネイロ駅で、手紙の代書人をしています。このドーラに、ある女性が9歳のジョズエという息子をつれて、離婚した夫への代書をたのみます。ところがこの母親は、駅前で車にひかれて死んでしまい、ブラジルの現実では、ジョズエは放置され孤児になってしまいます。不憫に思ったドーラはジョズエを家に連れて帰ります。ジョズエに目を付けたヤクザが、ドーラから500ドルでジョズエを買い取り、ドーラはこのお金でテレビを買います。ヤクザは、ジョズエを養子斡旋業者に1000ドルで売り飛ばしました。ところが、この業者の実態は臓器売買業者で、少年を殺し臓器を取り売りさばく連中でした。それを知ったドーラは、ジョズエを救い出し、ふたりで少年の家族を探す旅に出て、無事に父親のもとにつれて行きます。





この映画の内容から、ブラジル社会の現実を考えてみましょう。ブラジルでは、字が書けない人が多いので代書業者がいます。また、駅の売店を仕切るヤクザは、サンドイッチを盗んだ青年を、人が見ないところに連れていって、命乞いをしているにも関わらず、撃ち殺してしまいます。ドーラは代書をしていますが、実際は切手代を惜しんで送っていませんでした。ドーラはジョズエを売ったお金でテレビを買いますが、貧富の差がはげしいこの国では、テレビが貴重品なのです。ブラジルでは子供をつれた親が交通事故にでもあったら、公的機関が子供を家族に届けるようなことをしません。また、人を殺して臓器を売る組織があります。






本稿で、銃について考えるのは、単に銃の所持を奨励するためではありません。世界の平和、国家の安全保障、社会の治安、人々の安寧を確かなものにすることに究極的目的があります。「セントラルステーション」で分かることは、人に犯罪を犯させるのは、社会における、極端な貧富の格差や教育の欠陥などの社会的条件があります。犯罪をなくすには、このような犯罪を引き起こす社会的条件を改善しなくてはなりません。一方で、人々に、人倫道徳、人命重視の社会教育をなして、ひとりひとりの心を豊かにして、犯罪など犯さない、正しい人間に教育しなければなりません。






しかし、現実に世界には、他国を狙う危険な全体主義国家があり、国防を疎かにすれば、侵略されてしまいます。また、社会には、犯罪を犯す者たちが多く存在します。そのような状況において、銃をもたない、ナイフをもたない、という人の力を弱める方向で、凶悪な犯罪を防ぐことができるでしょうか。






国家と国民を守るため、民主国家がしっかり国防をし、全体主義の侵略に対抗しなければなりません。一方、国民が銃を所持し自己防衛する方向で、社会の犯罪に対抗すべきではないかということも考えなければなりません。





平和な日本において、はたして、銃は悪でしょうか。もしそうなら、警察官が銃を携帯していることを説明できません。間違いなく、警察官が銃をもつことによって、犯罪に対する抑止力を発揮し、私たちは守られているのです。






世界に銃は約5億丁あるといわれますが、その半数あまりはアメリカ人が所有しています。アメリカは、世界一の経済力と技術力、他を圧倒する軍事力を有し、世界の安全にとって最も重要な国です。そして、世界安全度指数のランキングで128位、殺人犠牲者数は65位です。危険な世界において、アメリカは平均的な国家といえるのです。銃をめぐる考察では、アメリカを中心としなければなりません。ですから、次にアメリカにおける銃の問題を考えてみたいと思います。    (永田)