宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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ユダヤ苦難史から学ぶ武漢肺炎克服 -「屋根の上のバイオリン弾き」から

1.何故、帝政ロシア時代のユダヤ人物語が60年代のアメリカで大ヒットしたか?




「屋根の上のバイオリン弾き」は、1964年からアメリカで始まり、3242回続いたロングラン・ミュージカルですが、ユダヤ人作家、ショーレム・アレイヘムが1894年に書いた「牛乳屋テヴィエ」が原作です。日本では、1967年から、森繁久弥さんがテヴィエ役を演じたミュージカルとして知られ、西田敏行さんに受け継がれ、今でも、市村正親さんがテヴィエを演じるという、これもロングラン・ミュージカルです。






テヴィエの家は、先祖代々の地、帝政ロシアのアナテフカというユダヤ人村に、テヴィエと妻、5人の娘と、ユダヤ教の伝統を守り暮らしています。ストーリーは、3人の娘の結婚を中心に展開しますが、ユダヤでは、子供の結婚相手は親が決めるのが伝統でした。テヴィエは、長女のツァイテルを金持ちの肉屋と結婚させようとしますが、ツァイテルには仕立て屋のモーテルという恋人がいて、仕方なく彼との結婚を許します。次女のホーデルは、革命を夢見る学生パーチェックと結ばれ、3女は、勝手にロシア人の青年とロシア正教の教会で結婚し、駆け落ちしてしまいます。






テヴィエは、先祖代々ひき継いだ伝統を守ろうとする父親ですが、親の願い通りにしない三人の娘の結婚に、結局は、寛大に許す優しい男でした。このミュージカルが大変なロングランになった理由は、この時期のアメリカでは、ユダヤ人だけでなく、移民でやって来た人々が、伝統を守ろうとする一世と、二世との間で同じような葛藤があったので、広く共感を得たからです。






2.核心部分は「ユダヤ人の危険な運命」



どんな作品でも、人々との共通性とともに、異質性、意外性がなければ深い感銘を与えられません。今まで言及したのは移民の人々がかかえる共通性ですが、他の移民の人々と違う、ユダヤ人のもつ異質性は以下の内容です。






帝政ロシア時代、ユダヤ人は度重なる迫害を受けました。この物語は、ユダヤ人が、常に、危険な運命にさらされる不安定な足場に立つ人々であることを教えます。それが「屋根の上のバイオリン弾き」というタイトルに示されます。ユダヤ人とは、屋根の上でバイオリンを弾く者のように、たとえ一生懸命バイオリンを弾いていても、何時、滑り落ちて傷を負い、あるいは生命を失うかもしれないような、危険な宿命を負っている人々であることを暗示します。






最初にアメリカに渡った人々は、イギリスで宗教的迫害を受けて渡った新教徒のピューリタンたちですが、その迫害は、先祖代々繰り返し受けたものではありません。更には、アメリカに来れば迫害を受けない明るい未来が待っています。しかしユダヤ人は、キリスト教徒からキリスト殺しと憎まれ、度重なる迫害を受け、未来においても、迫害を受けない保証はありません。






それが、この物語のラストである、アナテフカ村の人々が全員追放される場面です。ロシア政府は3日以内に村を立ち退くことを命じたのです。これが「屋根の上のバイオリン弾き」が暗示するユダヤ人を待つ苛酷な運命です。彼らは、平和に日々を送っていても、生活基盤がいつ奪われるか分からないのです。





3.最悪の状況を想定し、武漢肺炎の克服を



このような苦難の歴史を経たユダヤ人は、常に、最悪の事態を想定するという智慧をもつようになりました。今回、イスラエルが、新型コロナウイルス対策で、即座に、中国人はもちろん、韓国人と日本人に対しても入国を禁じる厳しい措置をとりましたが、これは臆病だからではありません。常に最悪の事態を想定するからです。最悪の事態を想定するということは、人間に、究極の忍耐と勇気、そして、断固たる行動をとる決断力を与えます。





日本人は、ひたすら平和な状態が続くことを願い、最悪な事態などは、縁起でもないと、あえて考えないようにします。しかし、危機を克服する優れた発想は、冷静に、最悪の事態まで想定することです。今、私たちは、中国・武漢発の新型コロナウイルスの脅威にさらされています。強い感染力を持ち、症状は軽いといわれる一方、重篤になり、高齢でなくとも死亡する人もいます。なんとも、正体のつかめない不気味な病気です。今の時点では、この感染病の危機は、容易に解決されるかもしれないし、反対に、最悪の状況まで進むかもしれないと言うしかありません。






日本政府は、ウイルス対策において、世界から非難されるほど、的外れな対処をしています。いまだに中国人の入国を認め、国民は不安をいだいています。政府は中国に忖度し、全く腹が座っていません。中国がもたらす経済的利益やオリンピック開催にこだわり、イスラエルのような最悪の事態を想定した、断固たる処置ができないのです。







日本は75年前、戦争による被害という最悪の経験を経ました。私たちは、最悪の状況を想定し、苦難の歴史を教訓にするべきです。国土が焼け野原になっても、日本人は立派に立ち上がりました。私たちはそんな輝かしい歴史をもっているのです。






屋根の上でバイオリンを弾く人は、ユーモラスであわれみ深い人物です。人々に危険を知らせるとともに、苦しむ人を慰め、力を与えてくれる存在です。先の戦争で日本は焦土と化しましたが、同時に、民主的で豊かな国をつくる契機となりました。苦難と恵みは表裏一体なのです。






最悪の事態を想定し、それに備えれば、むしろ、今なすべきことも明確になります。そもそも、この武漢肺炎の根はどこにあるでしょうか。それは、言論、報道の自由を認めず、都合の悪いことは隠ぺいする、中国共産党の独裁体制です。世界の真の敵は、武漢肺炎を隠れ蓑にして延命を謀ろうとする中国共産党なのです






私たちは、武漢肺炎と戦うとともに、それを拡散させた中国共産党と戦わなければなりません。この全体主義体制に勝利すれば、今、私たちを苦しめている武漢肺炎も、中国、香港、台湾の15億人に達する人々が、自由と独立を得るための産みの苦しみだったという、祝福にすることができるのです。  (永田)