宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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武士道と鉄杖道 〈銃と平和6〉

1.剣-武士道-将軍


先に、日本では、剣と武士道は繋がっていると言いました。この繋がりは、更に大きなものと結びつきます。それが国の統治理念です。日本は、平家政権(1167)から明治維新(1868)までの700年あまり、鎌倉、室町、徳川という3代の武家政権が統治しました。武家政権の理念は「文武弓馬の道」という、「武」を重んじる思想です。





そして、全土のサムライを束ねる存在は「武家の棟梁」である「征夷大将軍」です。長く、日本の主権者、統治者は「征夷大将軍」でした。武士の力の象徴は剣であり、信念の核心も剣です。すなわち「剣」の力で将軍(SHO-GUN)が日本を統治したのです。「剣-武士道-将軍」は、強固な統治体系を成しました。





日本史上最強の武家政権は徳川幕府です。家康が大坂落城直後に頒布した、幕府の最高法「武家諸法度」の第1条は、「文武弓馬の道、専ら嗜むべきこと」です。家康は、全国の武士に対し「文武弓馬の道」を強調し、武士たる者は、もののふとしての心得を守り、戦いに備え、武術を磨けと命じているのです。幕府にこの精神、自信、そして力があったからこそ、260年ものあいだ「徳川の平和=パックス・トクガワ―ナ」といわれる戦争なき時代を現出できたのです。





一方、文武弓馬の道は、剣に象徴される「武」、「武器」というものを正しく管理する思想です。先に言及したように、日本においては、剣の力を武士道という思想で管理しました。武士道の基礎には、禅を始めとする仏教や神道、儒教の思想があります。新渡戸稲造の武士道』には、「仏教の与え得ざれしものを、神道が豊かに供給した。神道の教義によりて刻みこまれたる主君に対する忠誠、先祖に対する尊敬、ならびに親に対する孝行は、他のいかなる宗教によっても教えられなかったほどのものであって、これによって武士の傲慢なる性格に服従性が賦与せられた」、儒教は、「厳密なる意味においての道徳的教義に関しては、孔子の教訓は武士道の最も豊富なる淵源であった」と述べています。





江戸時代の武士は、武術と武士道を学び、高度に理念化された存在でした。徳川幕府を支えた旗本たちや明治維新を成し遂げた志士たちも、しっかり武士道を身に着けていました。江戸無血開城を成した勝海舟と西郷隆盛も、私心なく、国家と国民を思う高い精神をもっていました。だから、戦乱により首都を壊滅させることなく、明治維新を成功させることができたのです。





2.銃-鉄杖道-キリスト



しかし、アメリカはどうでしょうか。クリスチャンの銃所持支持派は、銃の所有は神が与えた神聖な権利だと主張します。しかし、日本における剣のように、銃に豊かな精神性を与える思想は存在しません。




現在、アメリカにおいて文亨進師が提唱する「Rod of Iron Thought・鉄のつえ思想」は、銃の精神的価値を発信する思想であり、新しい銃管理の思想です。日本語では「鉄杖道」とも称されます。これは、アメリカ人の精神的拠り所であるキリスト教・聖書に根拠をおく思想です。聖書には「鉄のつえ」という言葉が4か所あらわれます。





(A)女は男の子を産んだが、彼は鉄のつえをもってすべての国民を治めるべき者である。この子は、神のみもとに、その御座のところに、引き上げられた。 (黙示録12章5)




(B)その口からは、諸国民を打つために、鋭いつるぎが出ていた。彼は、鉄のつえをもって諸国民を治め、また、全能者なる神の激しい怒りの酒ぶねを踏む。 (黙示録19章15)





(C)彼は鉄のつえをもって、ちょうど土の器を砕くように、彼らを治めるであろう。それは、わたし自身が父から権威を受けて治めるのと同様である。 (黙示録2章27)





(D)わたしに求めよ、わたしはもろもろの国を嗣業としておまえに与え、地のはてまでおまえの所有として与える。おまえは鉄のつえをもって彼らを打ち破り、陶工の作る器物のように彼らを打ち砕くであろう。 (詩編2章8-9)





(A)の、「女が生んだ男の子」はまさにキリストを指し、全ての文で「キリストの戦い」と「キリストの統治」が強調されています。聖書には、明確に、キリストは、鉄のつえをもって悪と戦い、鉄のつえをもって世界を統治すると記されているのです。すなわち「鉄のつえ-キリスト-統治」はひとつの思想体系を成します。






ユダヤ教・キリスト教を貫徹する預言書である黙示文学は、苦難を受ける信徒を激励する目的をもちます。ですから、歴史的に難しい課題をかかえたクリスチャンは、黙示録の言葉を自分の時代に即し解釈し、問題の解決を目指しました。鉄のつえの思想は、現代アメリカがかかえる課題を解決する理念体系です。それは文亨進師が以下の書籍に著しました。(『Rod of Iron Kingdom』hyung Jin Sean Moon.2018・日本語版『鉄のつえの王国』文亨進)





文師は、鉄のつえは銃であるという大胆な主張を展開します。アメリカは悪なる体制である全体主義と戦い、自由主義諸国を守り導く使命があります。毛沢東が「権力は銃口から生まれる」と言ったように、中国共産党の全体主義者は、力、武力の徹底した信奉者です。しかし、それは一面の真理であり、国際政治の行方は力が決します。ですから、赤い全体主義から自由主義国家を守る力も「銃口から生まれる」のです。




自由主義国家に力がなければ中国が勝利し、人類は悲惨な運命に陥ります。中国の脅威に直面する世界において、アメリカは強くあらねばなりません。「Rod of Iron Thought・鉄のつえ思想」は、21世紀、アメリカが使命を果たす力を与える理念であり、アメリカ市民が「銃」、「武器」を正しく管理するための思想です。






3.文明を守り発展させる思想



文明的にみると、長き「石器時代」と「青銅器時代」を経て、鉄器の時代に至り、現代はまさに「鉄器時代」です。人類は、鉄の利用で、農耕、建築、生活の革命的進化を成し遂げました。現代文明をつくり上げている基本素材は鉄なのです。





興味深いことに、キリストが悪と戦い、統治する象徴が「黄金のつえ」でも「青銅のつえ」でもないことです。「鉄」は、「黄金」や「青銅」のような貴金属でない、大量に使われる実用に即した金属です。聖書では、キリストの統治をこの実用的な「鉄」で表現したのです。






宝石や黄金、青銅は、キリストが統治する天国のすばらしさ、すなわち精神世界を表現できます。しかし、理想世界である天国を創建するには、前提として、キリストが悪と戦い勝利し、天国を創建する「現実的力」が不可欠です。すなわち、キリストの御業は、宝石で示した精神世界だけでなく、鉄のつえで示した実質的、現実的なものにも及ぶということです。すなわち、人々に救いをもたらす「天国」は、天上だけではなく、私たちが肉体を持って生活するこの地上にも顕現する「天上地上天国」なのです。キリスト教は天上天国のみを望み、地上天国は想定しませんでした。これは天上と地上、精神と現実の乖離をもたらします。精神世界と現実世界を総合した、神の摂理観である鉄杖道思想は、今、アメリカ社会に着実に広がりつつあります。





日本において、貴族が統治した時代を平安時代といいますが、実際は平安な時代ではありませんでした。戦争があったわけではなく、貴族が弱く、無責任で、しっかり国の治安を維持していなかったのです。文明を守り発展させるには、統治者が強い責任感と力を持たなければなりません。平安時代は、映画「羅生門」のように、強盗や夜盗が出没し、人々は安全に旅をすることも出来ませんでした。強く責任感がある武士たちが統治した鎌倉時代に至り、日本の治安は飛躍的に改善されたのです。





もし、モンゴルの侵略である元寇が、貴族が統治する平安時代に起きたなら日本はどうなったでしょうか。貴族たちにはモンゴル軍と戦う勇気も能力もありませんでした。当時の日本が平安貴族が統治する時代だったら、同じく貴族が統治した高麗のように、間違いなくこの国はモンゴルの属国になっていたことでしょう。トインビーが言っていたように、文明は内外から強い挑戦を受けます。文明を守り発展させるには主権者の責任意識と力が必要なのです。





今日、主権者、統治者は私たち一人一人の国民です。国民が文明を守る責任感と力を持たなければなりません。その意味で、武装を禁じ、自己防衛権を放棄した憲法9条に執着する護憲派は、平安貴族のように弱く無責任な人々です。日本は現代のモンゴル帝国といえる中国の侵略に抵抗するため、一刻も早く、亡国憲法を改正し、国防力も増強しなければなりません。






日本は世界有数の平和な国です。もちろん、銃は容易に所持できず、人々の意識の外にあります。しかし、武士道の伝統をもつ私たちは、アメリカで起き始めた鉄のつえ運動を理解できる充分な思想的背景があります。日本は、人類文明を守り、世界の平和と安全を維持するため、アメリカと力を合わせなければなりません。そのために私たちは「銃と平和」の問題を真剣に考える必要があります。 (永田)