宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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〈編Ⅱ〉『鉄のつえの王国』・ダイジェスト〈2〉

〈編Ⅱ〉に入る前に、アメリカの思想について述べた方がいいと思います。アメリカは、移民によってつくられた国で、様々な人種、宗教の人々が混在していました。そんな複雑なアメリカを一つに結びつけた精神はキリスト教です。それは、今日でも大統領が就任するとき、聖書に手を置いて神に誓う行為が雄弁に物語っています。しかし、ここ100年あまり、キリスト教精神は、唯物主義、あるいは、正体を隠した共産主義から攻撃を受けています。これは文化共産主義と称することもできます。今日、アメリカの各界に中国共産党の勢力が浸透していますが、それを可能にした思想的土壌をつくったのも文化共産主義です。今回の『鉄のつえの王国』ダイジェストでは、アメリカを侵食する共産主義と、この国の自由・民主主義を守護するユダヤ・キリスト教についての問題を要約しました。





1.アメリカに対する共産主義の脅威



戦後、共産主義者は、メディアを通じ、大衆の注意をナチスドイツによる大量虐殺に集中させました。その一方で、ソ連や中国、ベトナム、カンボジア、キューバでの膨大な死者の数については最小限に見積もりました。






また、共産主義独裁や、社会主義に対して公然と疑問を呈する者は、誰かれ問わず「ナチ」のレッテルを貼りました。イタリアのファシズム研究者アンソニー・グレゴーが指摘するように、キリスト教徒を公言する者、減税を主張する者、政府規制の緩和を求める者、人為的な「地球温暖化」に疑問をもつ者や、「絶滅危惧種」の衰退に関心のない者たちには、決まって「ファシスト」のレッテルが貼られます。






「ナチ」とは「国家社会主義ドイツ労働者党」の党員を指します。その名のとおり、そもそもナチスは、アーリア民族に傾倒した民族主義的な行動をとる「社会主義者」なのです。彼らは国民の生活に対し「大きな政府」の統制と規制を求めるのです。






信じられないかもしれませんが、ニューディール政策を推進した民主党フランクリン・ルーズベルトは、イタリア・ファシスト党のムッソリーニと、彼の中央集権政府による計画と行動を称賛していました。ヴォルフガング・シューベルブッシュは、『3つのニューディール〈ルーズベルトのアメリカ・ムッソリーニのイタリア・ヒットラーのドイツについての回想〉』で、「アメリカ人の進歩派たちはドイツの大学で学び、自由主義原理でない、現代社会を組織する最も効果的なやり方として、強力な国家とプロイセン軍国主義というヘーゲルの理論を評価するようになった」と述べました。






1930年代を通して、アメリカの知識人やジャーナリストは「ニューディールとファシズム、国家社会主義は一致する」とよく口にしました。この3つは、個人主義、自由市場、地方分権という「古典的な英仏の自由主義」に優越するとみなしていたのです。






そして今日、ロナルド・レーガンやドナルド・トランプ大統領などは、国家権力を制限するための多くの政策をとっているのに、主流ニュースメディアはいつも、彼らを新しい「ヒットラー」だの「ナチ」だのと非難します。政敵を安易に怪物に仕立てるため、乱暴に「ファシスト」と決めつける前に、どうして政策の本質について議論をしないのでしょうか。






2.多文化主義という分裂思想



アメリカ建国のビジョンは、国章に刻まれた「多数から一つへ・E Pluribus Unum」です。人種、宗教、国籍が何であり、「生命、自由および幸福追求に対する侵すことのできない権利を有する」という保証のもと、皆がアメリカンドリームへの参加を歓迎されました。ですから、マーチン・ルーサー・キング牧師は「人間は肌の色によってでなく、人格そのものによって評価されるべきだ」という名言を残しました。






しかし左翼は、「多様性」を強調するあまり、国章のモットーを「一つから多数へ」と逆にしてしまいました。彼らの「多文化的な」言い方をすれば、建国の理念は単に「白人男性の特権」を誤魔化すためのものだ、ということになります。彼らの見方では、「アメリカは一つではない」のです。アメリカは多様な人種の集まりであり、増加の一途をたどる、トランスジェンダー・LGBTQの集合体なのです。そして彼らは、政府の権力をつかい「平等」を押し付け、これら「少数の犠牲者」から奪ったお金を再分配せよと要求するのです。






全米の大学で広く使われている言葉に「白人の特権」があります。テキサス州立大学の新聞には「白の死は全員にとって解放を意味するだろう … それが成るまでは、覚えていてほしい。あなたたちは存在すべきでなかった。故に、私は憎む。あなたたちは地球の支配的機構であり、あなたに出会った他のすべての文化を殺す深い淵だ」






しかし、もしも、アメリカが白人優位主義の恐ろしいところなら、何故、多くのアフリカ人、アジア人や、ラテン・アメリカ人が、ときには命を懸けてまでこの国に来ようとするのでしょうか? また、世界のそれらの地域から移民してきた第一世代が、何世代もアメリカで住み続けている平均的アメリカ人より豊かな暮らしをしているのはどうしたことなのでしょう? 少数民族である在米アジア人の平均所得が他の民族を抜いて最高の81000ドルで、白人を33%も上回っている事実をどう説明するのでしょうか?






神様が世界で最も自由で豊かな国として祝福して下さったアメリカを、こんなにもさげすむように教え込む大学に、自分の子供を行かせるべきか否かについて、私はじっくり考えたいと思います。






3.反ファシズム ANTIFA



作家で映画監督のディネシュ・ドゥスーサはこう指摘します。
自称反ファシズムと、ファシズムのあいだの密接な関係は、ANTIFAの主要なスポンサーであるジョージ・ソロスの知られざる一面に見出すことができる。ハンガリー生まれのソロスは、その抜け目ない世界的投資と為替操作で億万長者になった。ソロスのクォンタム・ファンドは世界最初の民間ヘッジファンドのひとつだ。そしてソロスは、200ほどの左翼グループの主要な支援者だ。






ドゥスーサは、1998年CBSの60ミニッツ(アメリカの人気番組)でのソロスのインタビューに注目します。そのなかでソロスは、十代の頃ハンガリーで、同胞であるユダヤ人の資産と所持品を没収するのを手伝ったとき、何の罪の意識も感じることはなかったと語っていました。ドゥスーサはこう指摘します。「ソロスと左翼による、自称反ファシズムは詐欺行為だ。なぜなら彼らが闘っている相手に、ファシストなど存在しないからだ。彼らの活動のなかでファシズムを見つけるとするなら、それは彼らの活動そのものがそれだ」






メディアは、それ自身のファシスト的傾向を曖昧にするために、左翼の主張の自発的な共犯者になりました。ユーチューブは最近、南部貧困法律センターの「ヘイト監視リスト」に入っている他のチャンネルと共に、サンクチュアリ教会のチャンネルを削除しました。






今まで削除されたアカウントのリストには、元大統領候補や、アメリカ合衆国住宅都市開発省長官のベン・カーソンがいます。それに、ソマリア生まれの男女同権主義者アヤーン・ヒルシ・アリは、イスラム世界での女性の権利を訴え、強制的結婚、名誉殺人、子供の結婚、女性器切除に異を唱える人なのです。







これらは、ユダヤ・キリスト教的価値を嫌うジョージ・ソロスや、他の金持ち左翼が資金援助しています。南部貧困法律センターに同調するグーグル、YouTube、フェイスブック、ツイッターなどによる、アメリカ建国のビジョン、すなわち小さな政府のビジョンを支持する保守系団体への攻撃は、自由を愛する者たちの恐るべき脅威です。






4.ユダヤ・キリスト教の基盤はすべての人の自由を守る



16世紀、ハゲ頭の修道僧が、キリスト教徒は神と直接にコミュニケーションをとることができ、人と神を仲介するための教皇を必要としないと主張しました。マルチン・ルターは、まさに殉教者ヤン・フスがその100年前に宣言したものと同様に、信仰に切望される中心的価値は、神の言葉、聖書であると宣言したのです。






すべての信徒が司祭たり得るというルターの信念は、人間と彼らが生きる階層との関係において新しいパラダイムを生み出しました。ドイツのヴィッテンベルクの教会の扉に95箇条の論題をクギで打ち付けることで、ルターはカトリック教会の基礎を個人に移すという霊的な大変動を解き放ちました。ルターの宗教の自由についての考え方は、アメリカ憲法の起草者に大きな影響を与えたジョン・ロックの自由思想よりも、一世紀以上も前に大きく形作られていたのです。






建国の父たちはさまざまな宗教的信念を堅持していましたが、彼らの大多数は王に支配されることを望まないという信念を持っていました。建国の父たちが拒否していたのはイギリス国王の権威だけでなく、中央集権的な権力そのものでした。キリスト教徒であれ理神論者であれ、彼らはみな、聖書の文化とその物語に精通していました。例をあげると、後にアメリカ合衆国の第2代大統領になったジョン・アダムスは、1776年に友人にあてた手紙でこうを書いています。「アメリカ植民地のように非常に強力な組織体を管理するには、ダニエルの勇気に加えて、モーセの柔和さ、ヨブの忍耐、ソロモンの知恵が必要です」






建国者たちは、なぜ権力を行政、立法、司法の各部門に分割することを主張したのでしょうか。彼らは、中央集権的な専制がどのようなものであるかを、身をもって体験していたので、ヨーロッパで一般的だった王の「神聖な」権利を全く望みませんでした。






建国者のある者たちは奴隷を所有していましたが、それはアメリカ史上最も血なまぐさい南北戦争を引き起こした国家的な罪です。しかし、独立宣言で宣言された原則は、奴隷制度の廃止を要求する廃止派が主張したものでした。それからほぼ2世紀後、1963年にマーチン・ルーサー・キングがワシントン記念塔で演説したとき、こう言いました。






ある意味で、われわれは、小切手を換金するためにわが国の首都に来ています。われわれの共和国の建築家たちが合衆国憲法と独立宣言に崇高な言葉を書き記したとき、かれらは、あらゆる米国民が継承することになる約束手形に署名したのです。この手形は、すべての人々は、白人と同じく黒人も、生命、自由、そして幸福の追求という不可侵の権利を保証される、という約束でした。






アメリカの自由は、私たちの性別、肌の色、国籍、宗教に関係なく、あなたと私は平等であるという確信が生まれたユダヤ・キリスト教的価値をしっかりと守らなければ維持できないのです。





アメリカではかつて、モーセの十戒は、すべての市民が従うべき真理として尊敬されました。しかし今日、長く共有されたキリスト教的市民文化から遠ざかってしまいました。私たちはアメリカ統合の目的が破壊されていることに、黙って傍観してはいけません。建国の父の遺産が、この先何年も将来の世代に確実に引き継がれるようにすることは、私たちが子孫に負う重大な責任なのです。