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ゾルゲ情報と小野寺情報 -情報と国家の運命-

情報と国家の運命


ソ連のスパイ、ゾルゲが、1940年6月の御前会議で、日米開戦を決定したという情報をスターリンに送り、ソ連は大量の対日戦力を対ドイツ戦に向け、ドイツに勝利することができました。これが有名なゾルゲスパイ事件です。






しかし、当時の日本は、国家の運命を左右する、ゾルゲ情報よりはるかに重要な情報を得ていました。その情報を送ったのは、スウェーデン駐在武官、小野寺信です。彼は、全て事前に、①不可侵条約を破りドイツがソ連に攻め込む。②独ソ戦でドイツが負けており、「日米開戦絶対不可なり」という情報を30回も送った。③ヤルタ会談の3か月後にソ連は日ソ中立条約を破り、満州に攻め込むという、驚くべき情報を東京に打電していました。この小野寺情報を取り上げていれば、日本は戦争の勝者になっていたほどの重大情報です。





ところが、この情報を参謀本部は全て無視しました。それをやったのは、80年代、中曽根、全斗煥会談をまとめた、あの瀬島隆三だという説もあります。瀬島が参謀本部の意思決定に強い影響をもつ人物であったことは確かです。彼は満州でソ連軍との交渉を行い、戦後、伊藤忠商事会長となり、政財界のフィクサーになりました。





小野寺情報をめぐる事実は、どんな情報でも、情報それ自体よりも、それを受けとめる者の水準が、はるかに重要であるということを教えます。日本は小野寺情報という最も重要な情報を無視し、アメリカと戦争をはじめました。また、日本に攻め込むことを決めていたスターリンにアメリカとの和平を頼み、戦争の悲劇を拡大し、原爆まで落とされました。




この情報の戦いは、「スパイ・ゾルゲ」対「スパイ・小野寺」でなく、「スターリン」と「日本の参謀」の頭脳の戦いでした。それに、参謀たちは敗れたのです。






情報戦は、敵から取る、敵に取られるという奪い合いというより、情報を分析する人間の判断力がもっと大事なのです。正確な最高機密情報を得ても、その価値が分からず、間違った行動をして敗北する。反対に、周辺情報だけであっても、優れた知性で事実を把握し、的確な行動をとり、勝利することもあります。また、冷酷な情報戦ですが、優れた情報は、意外と、人と人の「信頼」や「友情」から得られます。






下にあげた映像は、35年も前に放映されたNHK特集「日米開戦不可ナリ-ストックホルム小野寺大佐発至急電-」です。この内容からは、情報と国家の運命について多くのことを学ぶことができます。






「日米開戦不可ナリ」|ストックホルム 小野寺大佐発至急電