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〈中国・日本連合軍がアメリカ・ヨーロッパと戦う〉S・ハンチントンの予言  -マルクス主義に回帰する習近平・中国-

1.儒教文明とキリスト教文明の大戦争


『文明の衝突』の著者である、アメリカの国際政治学者サミュエル・ハンチントン氏は、21世紀は世界の文明間の葛藤、対立が深刻化すると論じ、そのなかでも中国の儒教文明とキリスト教文明は戦争に至るほど激しく対立する可能性があると予想しました。





1996年に出版されたこの本では、2010年のことと仮定し、南シナ海の領有をめぐるベトナムと中国の紛争にアメリカが介入し、戦争が勃発、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、インドに対し、中国、日本、イスラム勢力の連合が戦う世界大戦になり、戦後の世界政治の中心は、戦禍で疲弊した北部から南部へ移動するとしました。





まさに唖然とする内容です。ハンチントン氏の学説は、アメリカでも批判的に見る人も多く、これが一般的アメリカ人の考えとは言えませんが、この極端な内容からは、アメリカをはじめ、西洋での中国に対する強い警戒感をうかがい知ることができます。中国が、儒教文明という異文明で、そのうえ、共産主義という排他的イデオロギーをもつ巨大国家とみています。こんな得体の知れぬ文明の中国が、経済力、軍事力を増強したら、きっとキリスト教文明の脅威になるに違いないと感じています。





共産中国と日本が同盟するというのは遺憾ですが、文明を中心に考えるとこうなります。アメリカとヨーロッパ、ロシアのキリスト教文明は兄弟であり、インドは、支配階層がアーリア人=白人で、イギリスの支配を受け西洋言語である英語が通じ、文明的に西洋・キリスト教と近いのです。





それに比べ、儒教文明の中国、アジア文明の影響を受けた日本、アジア的なイスラム教文明は、人種、文化、言語でも、キリスト教文明と遠いのです。文明を中心に置くと、自分と文明的内容が近いか遠いかで、人間や集団をとらえます。





2.中国の覇権主義は儒教とは無縁



一般的に、共産中国も儒教文化圏に区分しますが、この認識は儒教主義の伝統的中国と、共産主義の現代中国を混同してしまう危険があります。今日の中国の対外拡張姿勢は、儒教思想とは無縁で、それは共産主義思想と、近代における西洋帝国主義への反発が根となっています。内外政策において儒教思想と共産主義は正反対と言えます。共産主義は、軍事力、すなわち「武」を重視しますが、すでに論じたように、儒教は極端に「軍事・武」を軽視する思想です。





儒教を国家理念とした伝統的中国は平和主義であり、東アジアおいて、長く礼に基づく外交で平和を維持した歴史がありました。日本の「徳川の平和」は、近隣国家が明、清や朝鮮王朝のような対外侵略意思を放棄した国々だったから実現したもので、決して日本が単独で達成したものではありません。日本が島嶼独立国家たりえた主要な条件も、東北アジアの覇権国であった中華帝国が平和的な文治の帝国だったからだという事実を忘れてはならないのです。





3.中国はいまだウエスタンインパクトを克服できない



近代において、日本は西洋からしたたかに学び、彼らと肩を並べました。韓国は、キリスト教が発展し、韓国キリスト教の信仰パワーは欧米以上のものになりました。両国はそれぞれの方法で、ウエスタンインパクトを克服し、西洋と和解しました。しかし、中国は未だウエスタンインパクトを克服できず、西洋と和解していないのです。





中国人は、アヘン戦争から始まる、西洋列強に国土を奪われた歴史を昨日のことのように記憶しており、自国の近、現代史を語るときには、涙をこらえて語らなければならないのです。日本に当てはめれば、幕末に黒船がやって来た後、列強から弱みに付け込まれ第二次大戦終了まで植民地にされたということなのです。





中国人の世界認識は、先のハンチントン氏の挙げた国々を反対にすると判り易いと思います。中国にとって、文明的に近い国は、日本など漢字文化圏の国々や交流のあった周辺国家、イスラム諸国で、アメリカ、ヨーロッパ、ロシアは文明的により遠い国です。中国人が、本質的に、最も違和感を抱き対抗心を持つのは、日本ではなく、西洋なのです。日本は西洋の走狗にすぎません。いま、米・中対決という構図になっているのをみれば理解できます。





4.習近平の中国をどう見るか?



胡錦涛時代、中国は儒教を復興させていました。儒教は「武」を軽視し、「文」を重んじる思想ですが、それをよく知った上であえて儒教を再評価しました。しかし、習近平時代になり、儒教の再評価は影をひそめ、共産主義への回帰が鮮明になりました。マルクス主義の暴力革命肯定思想が、現在、中国が進めている対外拡張路線を支えます。





現代中国は、思想的に大きな岐路に立たされています。このまま共産主義を強調し、反西洋の軍事大国を目指す道か、あるいは、共産政権が倒れ、儒教をはじめとする、伝統的中国思想を強調し、世界と共存する道を行くかという選択を迫られています。





日本は中国の対外強硬姿勢には明確に反対意思を示し、牽制する一方、伝統的中国は正しく評価しなければなりません。それが、中国に対する最善の姿勢です。中国が過去のように、東アジアにおける平和的役割を果たす国家になることを願い、働き掛けるべきです。





しかし、最近、日本が中国に対し、ことさら融和的外交を行おうとしているのは、間違いです。それでは、共産主義の中国を認めることになってしまいます。どこまでも、中国が共産主義という好戦的思想を捨てる方向に誘導する外交を進めるべきです。              (永田)




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