宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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イスラエル ‐ 文明的視点から、日本が最も学ぶべき国

1.イスラエルも「入亜の国」


イスラエルは、日本とともにアジアのなかで異質な国である一方で、世界との文明的関係や歴史の歩みは対照的で、日本のあり方を考える上で、格好の背景をもつ国です。




ユダヤ民族発祥の地は西アジアの中東で、紀元70年、ローマ軍によりエルサレムが徹底的に破壊され国家を喪失しました。2000年にわたり、ユダヤ人は各地に居住し、1947年にアジア・中東に戻り建国しました。イスラエルも「入亜の国」なのです。





イスラエルは、西洋世界に強力な基盤を有し、それをバックグラウンドとしている国です。しかし、イスラム諸国と葛藤を抱え、強硬なイスラム国からは中東からの退去を迫られ、「アジアに入り込めない」という厳しい事情を抱えます。





日本人が、ユダヤ・イスラエルに強い関心を抱くのは、国の置かれた状況が類似しているからでしょう。イスラエル問題の解決も、この国が如何にして、アジアとの壁を取り除くかに掛っています。





2.ユダヤ・イスラエルは、キリスト教・イスラム教の「根」



反面、イスラエルは自国文明が、世界的文明圏と深く関係している、日本とは対照的な国です。ユダヤ文明は一神教思想を発明し、キリスト教文明とイスラム文明を誕生させた「根」となっています。ユダヤがなければ、この二つの文明もなく、その源となるイスラエルは、西アジア文明を代表する国です。このようにユダヤ文明は、世界的大文明と密接な関係をもち存在しています。





現在のイスラエルは、アメリカの支援、外交努力、世界に広がるユダヤ・ネットワークの力により、テロや周辺国との軋轢を抱えながらも「神が約束した地」に定着するため国家を挙げ努力しています。





キリスト教徒の多くもイスラエルを支持します。理由は、聖書を見れば判ります。「旧約聖書」とは、ユダヤの歴史と精神世界を記した経典ですが、ユダヤ人・イエスによって、世界宗教キリスト教が生まれ、キリスト教は「旧約聖書」を継承しました。





両者は、イエス以前のユダヤの歴史と、民を導いた神を共有しています。キリスト教徒がイスラエルを支持するのも、宗教的、文明的理由で、こんな背景のない民族だったら、イスラムとの葛藤のなかで、中東に国を維持することは到底不可能です。





3.ユダヤ人は、西洋に最も偉大な精神を与え、西洋から最も迫害されたアジア人



一方、イスラム教徒は、マホメットが昇天した聖地エルサレムを、イスラエルが首都と定め管理することに反対します。中東は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が、強い文明的執着を持ち、中東問題とは、この場所をめぐる、宗教文明の絡み合いが「根」となる葛藤構造です。この地の問題は、宗教文明間の葛藤の深刻さと、それを解きほぐす難しさを教えます。





また、ユダヤ人は苦難の歴史を経ました。国を失って2000年間は、キリスト教徒から度重なる迫害を受けました。過酷な迫害の後に、ユダヤ教とキリスト教は和解したのです。むしろユダヤ人は、イスラム王朝で平和に暮らした歴史がありました。ユダヤ人とは、西洋に最も偉大な精神的影響を与え、西洋から最も迫害されたアジア人なのです。





ユダヤ人は、異文明とのあいだで、葛藤と共存の歴史を経ました。国を失って味わった苦難の歴史も、彼らが国家の存在に固執する理由です。イスラエル人は、観念的な平和主義者ではありません。文明に対する強い執着と、現実政治を国家生存問題と認識し、一歩も譲らない厳しさを持つ国です。





4.イスラエルの安着は、平和的手段で成される



国際政治が弱肉強食の時代には、強力な国家は周辺国を制圧し覇者になりました。そんな時代ならば、イスラエルのような軍事能力をもつ国は、中東の覇権国家、あるいは帝国になっていたはずです。





しかし、現在の国際社会は、強国であっても武力で領土を拡張できません。1967年の戦争で、イスラエルが獲得したシナイ半島をエジプトに返還せざるを得なかったように、中東問題は力では解決できません。ユダヤ人が2000年待ち望んだ国は、平和的手段でしか安着できない時代に再建されたのです。




結局、ユダヤ人がこの地域に安住するには、パレスチナ人と周辺イスラム諸国と平和共存関係を構築する以外にありません。イスラエルは、IT産業、医療、農業などの分野で優れ、中東諸国はそれを必要としています。周辺国との対立を解消し、盛んな経済交流が行なわれれば、中東は目覚ましく発展できるのです。





5.イスラエル国民はアジア人としてのアイデンティティーが必要



イスラエルは、欧米からの移民が多く、欧米との繋がりが強いアジアで最も西洋的な国家の一つです。しかし、一旦地域に国をつくれば、その地域の文明と周辺諸国との共存は避けて通れない国家の最優先課題になります。




国家にとって、周辺国家との共存は、それなくしては存立すらままならない死活問題で、ユダヤ人がいかに優秀でも、イスラム教徒と和解、共存しない限り、常に危機に直面し、危うさから逃れられません。





イスラエルは、アジア発祥の大宗教の源流となった国、一方イスラムは、アジアを代表する宗教で、両者の和解は文明融和を前進させます。イスラエル国民は、自国のアジア的背景を再認識し、アジア人としてのアイデンティティーを見出すべきです。イスラエルに平和をもたらす道は、日本と同じように、自国の原点に回帰し、「入亜」というアジアと融和する、精神的、文明的挑戦を試みることです。





5.国際ユダヤから愛国ユダヤへ



一方、視点を変え、反グローバリズムの立場から見るとき、ユダヤ人は二つに分けられます。まず、グローバリストで、国際金融資本家や多国籍企業、政治、メディアなどで力を持つ「国際ユダヤ勢力」です。彼らは少数ですが、凄まじい力をもち、長く、影から世界を動かしてきた人々です。





一方、「愛国ユダヤ」は、イスラエルの指導者や国民、また世界に居住するユダヤ人で、純粋な愛国心をもつ人々です。この人々の方が、圧倒的に多数を占めます。トランプ大統領の登場とともに、愛国ユダヤの人々が飛躍できる世界になりました。




両者を見分けるポイントは、愛国ユダヤの人々は、当たり前の、素朴な愛国心をもち、国家、国民を大事にします。「国際ユダヤ」は、愛国心をもたず、国家を越えた発想をもち、自分たちの利益を増進させるため、国家、国民を犠牲にすることを厭わない人々です。





国際ユダヤ勢力は、ドルを発行し、金融界を牛耳り、政治家を買収し、更に、富を増やす一方で、中国や北朝鮮、イスラム過激派などを利用し、アメリカの力を抑え込み、戦争を引き起こしてきました。彼らこそ、世界を不幸におとし入れた張本人です。





愛国ユダヤの人々も、優秀で、各界で活躍する人も多く、巨大な力をもちます。私たち日本人は、反グローバリズムの立場から、愛国ユダヤ・イスラエル国民と連帯し、物欲と我欲に支配された世界を改革し、利他で生きる、平和な世界を創出しなければなりません。    (永田)




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