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アセアンは奇跡の「異文明連合体」 -EUはグローバリズム帝国・アセアンはインターナショナルな国家連合-

1.なぜ、アセアンは安定しているか?



EUは、解体が予想されますが、アセアン(東南アジア諸国連合)は、そんな危惧はありません。加盟国にとって、アセアン体制が、自国に損がなく利益が多いからです。イギリスがEUを脱退するのは、主権を侵害され、望まない移民が流れ込み、経済的にも得るものが無いからで、何よりも、自国がEU本部に従属しなければなりません。まさに、EUはグローバリズム帝国で、中心国家はドイツです。





それに比べ、アセアンは、加盟国の主権は侵害されず、移民受け入れの義務もなく、経済的に自国に損なことを強要されず、ユーロのような無謀な貨幣統合の計画などもありません。アセアンは、加盟国がしっかり主権を持ち、他の加盟国と、同等なインターナショナルな関係をもつ自由な連合体です。加盟国の上に本部が君臨し主権を奪うEUと、全く異なる国家連合です。





2.異宗教・異文明融和の連合体



また、EUは全てキリスト教国家で、異教徒の国家は加盟させませんでした。長年、イスラム教のトルコが加盟を願っても許しませんでした。それに比べアセアンは、異宗教、異文明に対する寛容な態度で結成されました。加盟国を見ると、タイ、カンボジアは仏教国、インドネシアはイスラム教国、マレーシアはイスラム教徒のマレー人が主流をなす複合民族国家、ブルネイもイスラム教国、シンガポールは複合民族国家で華僑が中心となっている国、フィリピンはキリスト教国、ベトナムとラオス、ミャンマーは仏教が強い国ですが、社会主義国です。





世界の地域連合、地域協力機構は、だいたい、文明を同じくする国家が結集しますが、アセアンは、宗教、文明の違いに寛容なアジアという土壌の上に実現できた、世界文明史における奇跡のような連合です。ここでは仏教、イスラム教、キリスト教、華僑社会やベトナムに根付いた儒教と道教、そしてインド人のヒンズー教などが、大きな「アセアン世界」の中で共存しています。





アセアンは、このように宗教、民族、イデオロギーの構成が複雑な国家連合で、とても協力など不可能に思えますが、加盟各国は様々な違いを越え、共存、協力を推進する賢明な選択をしました。一方で、各国は、内外に民族、宗教を原因とする葛藤、対立を抱えますが、アセアンという巨大な繋がりが、対立の拡大を防ぎ緩和させる役割を果たしているのです。






3.EUより優れた国家連合モデル



また、フィリピンは島嶼国家であるとともに、唯一のキリスト教国家ですが、「脱亜」など考えもしません。シンガポールもアセアン諸国のなかで群を抜いて発展しているとともに多民族国家ですが、「脱亜的発想」はなく周辺国との共存を重視しています。この二国は特別に異質な国ですが、アセアンというアジア国家の結び付きの中で、地域と融和しているのです。





東南アジアはヨーロッパ列強から植民地支配を受けました。諸国には同じ苦難の時代を経た共通経験と、同じ地域に帰属するという「地縁意識」が存在します。アセアンは、国家が、周辺地域、諸国との連帯の重要さを示す共同体で、地域共存、協力が、各国の宗教、文明の違いを超えてなすことができることを示した、多くの意味で、EUより優れた国家共同体モデルです。




民主党時代、鳩山元首相が、中国や韓国と「東アジア共同体」を創ろうと提案しましたが、すぐに霧散して幸いでした。将来、地域共同体や、国家連合をめざす動きは避けられません。その時は、アセアンのあり方がよき参考になることは間違いありません。   (永田)



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