宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

世界−人類−日本、皆が幸福になる知を探究します。

「日本沈没」を想定した国家戦略 -強靭国家の条件-

1.「黙示録」は生存戦略の書


今から50年前、小松左京氏の『日本沈没』が500万部というベストセラーになりました。単なるSFというより、科学的解説に支えられた、近未来小説のようです。これは、日本型「黙示文学」といえます。ユダヤ・キリスト教は、ノアの方舟と大洪水や、「黙示録」のような、悪なる世界が滅びて、善人が生きのびて新世界がやってくるという歴史認識があります。




その影響でしょうが、アメリカでは、世界が滅びて少数の人々が助かり、新しい時代が訪れるというSF映画が無数につくられています。「世界が滅びても自分たちは生存する」という、最悪の事態のなかでも希望を見出すユダヤ・キリスト教は、つくづく強靭な宗教だと感じます。





2.国家生存戦略は世界の現実 
-日本国憲法に「緊急事態条項」をいれよ-



しかしこれは、核の時代には、夢物語ではなく、現実の問題です。核保有国はじめ、世界の主要国は、核戦争が勃発し、自国が壊滅しても、多くの人が生きのびる国家戦略をもち、具体的プロジェクトも推進しています。そのために巨大な核シェルター建設など、民間防衛の備えをしています。





また、諸外国では、戦争や内乱、テロ、そして大災害が発生したとき、政府が非常事態に迅速に対応するため、憲法に「緊急事態条項」を定めています。ところが、日本国憲法には、「緊急事態条項」がありません。いま自民党は、憲法改正に、「緊急事態条項」を加えようと模索しています。しかし、戦争や内乱は国民の理解を得られないという判断で、大災害時のみを想定する内容です。





日本は、核兵器と充分な軍事力をもたず、アメリカに国防を依存しています。今の日本は、自己防衛の権利すら放棄する、愚かな憲法も改正せず、国家、国民の生存を他国に委ねる隷属的国家です。北朝鮮や中国が核をもっているのですから、日本が核をもつのは当然の権利です。戦後日本は、このように主権をおろそかにしているので、国家の最悪の事態に備える準備もせず、大災厄が襲ったときの「緊急事態条項」すら定めない、無責任な国になってしまいました。




まず、日本国憲法を改正し、自衛隊の存在をしっかり憲法に定め、災害時の「緊急事態条項」を憲法に盛り込むべきです。それを一歩とし、中国、北朝鮮という侵略的国家に侮られぬように、軍事力を着実に強化しなければなりません。





3.国家・国民生存のための新戦略 -日本人移住も選択肢―



東日本大震災は、津波による被害が甚大で、原発事故も深刻な様相を呈しました。大陸にある陸続きの国家群では、原発事故の影響は周辺国にもおよび、一国の問題に止まりません。大陸の国々は運命共同体なのです。一方、島嶼国である日本は、地理的な距離が、そのまま外国との意識、関心の距離になり、ひいては運命の距離になりかねません。日本はその距離を埋める国際的ネットワークをつくるべきです。 





また、諸国は陸路で外国と繋がっており、緊急避難が容易です。苦難の民族移動の歴史があり、それに伴い外国に同族の移住者を持ちます。個人、家庭単位で国際的ネットワークを持つ人も多く、万一の時は外国に移住するという選択肢を持っています。日本人にはそのようなネットワークを持つ人は極めて少数です。





私達は震災時、また復興活動のとき、つよく団結し、秩序正しく行動しました。それは世界の人々が称えた、日本人固有の長所です。しかし今後は、日本の弱点を踏まえた、国家・国民の生存戦略を立てるべきです。それには国家や集団だけでなく、個人、家族単位の戦略と行動が必要です。大胆な提案ですが、日本人の海外への移住、移民も選択肢のひとつです。





反グローバリズムは「大量の移民受け入れ」には反対ですが、「移住・移民」そのものに反対しているわけではありません。合法的な国際結婚で人が移住する。あるいは、国家において、許容内の移民には反対しません。その意味で、日本人が外国に移住・移民するケースはあまりに少ないのです。自分のため、子孫のために利益になる移住・移民は考慮すべきだと思います。ビジネスや留学を通じ、外国と縁のある人々も多く、そんな人は、発想と経済力があれば、移住は容易です。外国に移住した日本人が多ければ、その人々が世界と日本を堅く結びつけてくれます。





4.今、日本にいる外国人と心をつなげよう



また、在日の外国人と関係を深めるべきです。震災で感じたことは、日本に住む外国人も同じ苦難と恐怖を体験した、運命を共にする隣人だということです。そもそも私達も、国籍というものがなかった時代に大陸から渡来した多くの人々を含めて、今の日本人を形成しているのです。日本在住の外国人が日本を「第二の祖国」として愛着を持ってもらうことが重要です。




安価な労働力を得るため、大量に外国人労働者を受け入れるのでなく、いま日本に住む外国人と心を通じ合うことが大事です。大量に受け入れてしまえば、外国人と葛藤を生じ、むしろ、相互理解は難しくなります。私たちと心が通った在日外国人は、日本と世界をつなげる人々となり、日本の助け手になってくれます。





もっと簡単にできることは、日本人は旅行でも良いのでもっと海外に行くべきです。近年、年間の海外渡航者数は、イギリスやドイツは人口100人あたり約100人ほど、すなわち年に一度、全ての国民が外国に行く割合です。ところが日本は約14人で、両国の7分の1程度に過ぎません。2018年度の海外渡航者数は1895万人ですが、まだまだ少ないのです。海外旅行者が増加すれば、それだけ日本と世界のつながりは強まり、国民も大きな意識転換が可能です。





このような関係が広がれば、それが日本の国際的パワーとなるのです。東日本大震災を教訓にすべきです。軍事力の着実な強化とともに、一人一人が、世界の動きに関心をもち、世界に出ることが、日本が強靭な国家になる道です。日本への熱い愛情を抱く一方、海外に積極的に進出し、個人、家庭、国家にわたる国際的ネットワークを広げるべきです。        (永田)



6月までの記事は下のブログでご覧ください。