宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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反グローバリズムと映画・スノーデン

1.トランプ大統領当選で気づいたオリバー・ストーン監督




昨年11月、『スノーデン独白-消せない記録-』が出版され、2013年、ロシアに事実上亡命した元米情報機関員エドワード・スノーデン氏にふたたび注目が集まっています。ここでは、2016年に制作された映画「スノーデン」と、監督のオリバー・ストーン氏の発言をもとに、トランプ政権発足後の世界情勢について考えてみたいと思います。




トランプ氏の当選は、途方もない想定外なことでした。しかし、当選後、冷静に受け止め、トランプ反対から支持に変わった人も少なくありません。映画「スノーデン」の監督オリバー・ストーン氏もそのひとりです。ストーン監督と言えば、「プラトーン」と「7月4日に生まれて」でアカデミー監督賞を受賞し、「ウォール街」、「jFK」など傑作を世に出した、アメリカにおける社会派映画監督の第一人者です。






きびしい政府批判の作品を手掛け、オバマ元大統領やバニー・サンダース氏を支持した生粋のリベラル派でした。しかし、トランプ氏当選の直後、ショックを受けたと吐露しましたが、その後「トランプを良い方向にとらえよう」と転じ、2017年1月24日、朝日新聞とのインタビューで以下のように語りました。






これまで米国は自国経済に対処せず、多くが貧困層です。自国民を大切にしていません。ある面では自由放任主義かと思えば、別の面では規制が過剰です。トランプ氏もそう指摘しており、その点でも彼に賛成です。






彼は、イラク戦争は膨大な資産の無駄だった、と明確に語っています。正しい意見です。第2次大戦以降すべての戦争がそうです。ベトナム戦争はとてつもない無駄でした。けれども、明らかに大手メディアはトランプ氏を妨害したがっており、これには反対します。トランプ氏がプラスの変化を起こせるように応援しようじゃありませんか。





米国の情報機関について私は極めて懐疑的です。 ー  米国は世界をコントロールしたがり、他国の主権を認めたがらず、多くの国家を転覆させてきました。そんな情報機関をけなしているトランプ氏に賛成です。だが、そうしたことは社会で広く語られません。米国社会のリーダー層と反対の立場となるからです。




三つの発言の要点をまとめてみましょう。


① 米国は自国経済に対処せず、多くが貧困層で、自国民を
 大切にしていない

② イラク戦争は膨大な資産の無駄


③ 米国の情報機関やメディアに懐疑的

④ 米国は他国の主権を認めない


⑤ 上記のような意見は、米国社会のリーダー層と反対の立場





ストーン監督の主張は、スーパーエリートや情報機関、メディアに懐疑的で、国民や国家の主権を重んじ、国民を真の主権者と考えます。また、外国の主権も尊重し、戦争に極めて慎重な反グローバリズムの思想と重なります。






2.ヒラリーが当選したら第3次世界大戦の可能性も




ストーン監督の思想は、トランプ氏の対立候補ヒラリー氏に対する評価をみても、反グローバリズムそのものです。




ヒラリー・クリントン氏が勝っていれば危険だったと感じていました。彼女は本来の意味でのリベラルではないのです。米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変えるのがよいと信じていると思います。ロシアを敵視し、非常に攻撃的です。彼女が大統領になっていたら世界中で戦争や爆撃が増え、軍事費の浪費に陥っていたでしょう。第3次大戦の可能性さえあったと考えます。




米国はこうした政策を変える必要があります。トランプ氏は「アメリカ・ファースト」を掲げ、他国の悪をやっつけに行こうなどと言っていません。妙なことではありますが、この結果、政策を変えるべきだと考える人たちに近くなっています。




要約しましょう。


① 米国による新世界秩序
(=グローバリズムによる統一世界)に反対


② ロシアに理解を示す



③ リベラルはものすごい介入主義者と化している
(インタビューでは言ったが、朝日新聞ではなぜか削除されている)




ストーン監督は、民主党のヒラリー氏、共和党のブッシュ政権を鋭く批判しました。すなわち既存の政治を否定し、社会主義者バーニー・サンダース氏を支持しました。サンダース氏の主張は、反グローバリズムの主張と多くの部分で同一です。





そして、ストーン監督は、社会主義の観点から見れば全く反対である、保守の反グローバリズムに立つトランプ大統領に期待をかけました。この監督のドラスティックな転換は、まさに新しいアメリカの政治意識を象徴するものです。アメリカ国民が、党派を超越し、グローバリズムの悪弊を克服し、アメリカと世界に真の意味での平和をもたらす、新たな道を選択している大きな潮流を示しています。







3.映画「スノーデン」にあらわれる、国際政治の変転と
      グローバリスト、そして中国の脅威





ストーン監督は9回もスノーデン氏にインタビューし、この映画は自分の創作ではなく、彼から聞いた内容で制作したと強調しました。「スノーデン」には重要な場面があらわれます。情報機関の学校で、二コラス・ケイジ演じるフォレスター教官がスノーデンに以下のように言います。




情報は諜報業界のためにある。そう思っているだろう。だが、本当のところはどうか? 全ての方策を決めているのは、軍需産業が潤う、そういう管理体制だ。議会に税金を使わせて、業者に流れるように持ってゆく、効率も結果もこの際、関係ない。当然ながら ……… 授業に遅れるぞ。





フォレスター教官はまずいことを言っていると気づき、話を切ります。スノーデンが、「その件は誰かに話したんですか?」と問うと。「あー法務部にいったよ。問題を訴えた。その結果ここに追いやられて、君に教えている」と、左遷された事実を語ります。教官は、情報活動は国家のためではなく、軍需産業=グローバリストの利益のためにしていると指摘しているのです。





次は、スノーデンの人事権を持つ上級のコービン教官の意味深長な発言です。




君を中東には送らない。 — 20年後には、イラクは見捨てられ誰も目をむけない。テロは短期的な脅威だ。真の脅威は、中国やロシア、イランだ。サイバー攻撃を仕掛けてくるはずだぞ。君のような頭脳がなければ我が国はそれに負けてしまうだろう。私はくだらない石油戦争などで君を失いたくないんだ。政治家に迎合しなくても愛国者になれる。




これは2005年ぐらいに、コービン教官がスノーデン氏に言ったことです。この発言は、国際政治について多くの事を示唆します。コービン教官が言ったように、イラクはまさに今、発言のような状態に陥っています。また、「テロ」は短期的な脅威で、真の脅威は「国家」であると認識しています。一方、イラク戦争は、政治家が仕掛けた石油獲得のためのくだらない戦争。愛国者であれば、真の脅威である「国家」と戦うべきこと。そして、彼が真っ先にあげた国が「中国」だということです。




また、スノーデン氏は、中国やロシアのサイバー攻撃を防げると期待された優秀な人物でした。彼はアメリカ史上最大の内部告発者だとされていますが、彼の告発で、アメリカ情報機関が、世界中で、同盟国の指導者や個人におよぶ大量監視をしていることが露見したことは、本質的に、アメリカにとって悪い事ではありません。むしろよかったのです。スノーデン氏は20歳前半で、すでに2000万円もの年収を得るほど、能力を買われていました。アメリカの損失は、スノーデン氏の内部告発の「情報」ではなく、スノーデン氏の並外れた「能力」を失ったことです。




4.レーガン政権とトランプ政権のシンクロニシティ(同時性)




1981年に出発したレーガン政権は、ソ連を「悪の帝国」と批判し、断固とした反共産主義の外交政策を打ち出しました。そして、政権2期目の最初の年、1985年に、ソ連に改革派のゴルバチョフ政権が誕生しました。この4年後の1989年にはベルリンの壁が崩壊し、90年にはドイツの統一、そして、91年にはソ連が崩壊し、社会主義圏が消滅し、冷戦が終局しました。





今日、トランプ政権は、残された共産主義国・中国と激しい貿易戦争を展開しています。ペンス副大統領が「宣戦布告」と称せるような強力な反中国の演説をする一方、香港やウイグル、チベットの人権弾圧など、多方面から中国共産党の非人道的な政策を批判しています。反中国のうねりは、民主党も同調し、更には、ヨーロッパにも拡大しています。もはや、自由民主主義と共産全体主義の世界的な理念の戦いとなっており、この戦いは、中国共産党を倒すまで続けられます。このアメリカの政策により、すでに習近平は窮地に陥っています。




この状況は、映画「スノーデン」で、コルビー教官が、真の脅威として、まず「中国」を挙げていたことと重なります。また、最近のアメリカとイランの危機も、重なります。





レーガン政権の中間に保守派のチェルネンコが死去し、改革派のゴルバチョフが立ったことにより、ソ連共産党は改革から消滅に向かいました。それとシンクロをなして、トランプ政権の2期目を前後して、中国で、習近平が倒れ、改革派が立つことが期待されます。そうすることによって、中国人自らが、共産主義を克服し、自由民主主義の中国を建設できます。それが、戦争や混乱を経ずに、共産主義問題を解決できる唯一の道です。





今年は、日本は習近平国賓招待、台湾は総統選挙、韓国は総選挙があり、また、何よりも、アメリカの大統領選挙が控えています。共産主義とグローバリズムを克服するため、トランプ氏は再選されなければなりません。オリバー・ストーン監督のように、民主党支持者の中に、トランプ大統領を支持する「トランプ・デモクラット」に変わった人も少なくありません。今年の選挙ではトランプ氏が圧倒的支持を受けて再選される可能性も充分にあります。




今年の春に予定されている習近平の国賓招待などは、日本政府は撤回すべきです。それがかなわなくとも、日本国民がしっかり、中国に「NО」を突き付け、国民誰もが願わない習近平訪日を、中国共産党の終焉を告げる没落への契機にしなければなりません。  (永田)





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