宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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創価学会・激動する巨大教団  ー折伏から対話へー

 創価学会



昔、創価学会といえば、激しい折伏で他宗教を批判する排他的教団というイメージが強かったですが、今は大きく変化しました。また、宗教としては珍しく、「人間」や「民衆」を強調し、「愛」より「生命」を尊重します。公明党を立党し政治にも積極的に参加しています。しかし、この日本最大の新宗教のダイナミックな変貌は、あまり知られていません。まず、池田名誉会長の言葉を引用しましょう。




「仏教徒である前に、人間である。イスラム教徒である前に、人間である。キリスト教徒である前に、人間である。対話を通して、人間性という共通の大地に目を向け、友情が生まれれば、そこから互いの長所も見えてくる。学び合おうとする心も生まれるのだ」
            『池田大作名言100選』




 躍動する宗教



創価学会ほど劇的変化を遂げた教団はありません。第二次大戦中、当局の弾圧により初代会長牧口常三郎師が巣鴨拘置所で殉教を遂げ、二代会長戸田城聖師は、刑務所に収監されました。1960年に三代会長に就任した池田大作師は、10年も経ず、創価学会を日本最大の宗教に成長させたのです。





1975年には、SGI(創価学会インターナショナル)を設立し、世界宣教に力を入れ、1995年に定めたSGI憲章では、「仏法の寛容の精神を根本に他の宗教を尊重して、人類の基本的問題について対話し、その解決のために協力していく」と、他宗教と対話、協力する方向に大きく舵を切りました。1993年には、日蓮正宗から独立し、巨大な「新宗教」として再出発したのです。





創価学会は、法華経や日蓮曼荼羅がもつ、旺盛な生命力、躍動感にあふれています。これが今日の発展をみた力の源です。信濃町の50棟におよぶ施設群、創価大学や各地にある文化会館などを見れば、この教団のスケールを実感できます。このパワーを背景に世界で展開する平和運動も、法華経の世界観が反映した雄大で人間性あふれるものです。





多くの人にとって、「新宗教」といえば、まず創価学会が頭に浮かぶでしょう。創価学会は、規模、知名度などからみて、人々の「新宗教イメージ」を形成している教団といえます。テレビの、創価学会、聖教新聞の紹介映像は、たいへん融和的ですがすがしく、明らかにこれは、国民の新宗教観を刷新しています。





特筆すべきは、公明党の存在です。公明党は700万票を上回る得票数をもつ政党で、自民党と共に日本の政権与党を構成しています。天理教が天理市を持つため社会と融和が進んだように、創価学会も公明党を持つことにより社会との融和が進んだのです。都市も政党も公共性が求められ、人々から注目され厳しい監視を受けます。教団中心主義は通じません。宗教は社会活動を通じ、他者を認める寛容さを身に着けることができるのです。





宗教団体が政党をつくることは、政経分離の原則に違反すると激しい批判を受けました。公明党は結党以来50年、日本の民主主義と福祉向上に貢献し、宗教が政党を通じ理想を実現することが、社会にとっても有益であることを証明しました。公明党のあり方は、宗教の公益性を国内外に示すもので、宗教界にとって好ましいことです。





 対話の宗教へ



池田名誉会長は、「地球の運命が一つになった時代に求められる人間像こそ、開かれた心で人類益のために行動する〈世界市民〉である。〈グローバル社会〉には、〈人間のグローバル化〉、〈民衆のグローバル化〉、〈心のグローバル化〉が必須条件である」と、開かれた心、人類益、世界主義を強調します。





池田師は世界各地で講演しました。1993年、ハーバード大学で行った「21世紀文明と大乗仏教」という講演は、宗教家であるにもかかわらず、西洋知識人の言葉を15箇所も引用する学術的な内容で、巨視的、本質的で、東西文明の調和を中心に据えたものです。





大乗仏教を紹介するならば、教義のエッセンスを紹介するだけでも足ります。それを東西の知識を駆使し、宗教と学術の両面から、大乗の教えの真価を西洋文明圏に問うたのです。まさにこれは、東洋文明と西洋文明の橋渡しを成す公演です。創価学会の平和創出へのスタンスは、「宗教」を超え、「文明の融和」を目指すものです。





また、創価学会は国際的視野をもつと同時に、アジアを重視します。世界のなかのアジア文明、アジア文明の中の日本という認識が明確で、日本人が陥りやすい「脱亜的発想」を克服しました。その認識の上に、東西文明の仲介役割を成しているのです。





一方、対話を重視します。聖教新聞の「寸鉄」には、「仏者は他者から学ぶ。“対話の宗教”会長がそれを体現。― 後継よ続け」という短句が載せられていました。「対話」こそ、今日の創価学会の思想と行動を理解するキーワードなのです。





池田師は、トインビー、ゴルバチョフ、キッシンジャーなど、多くの世界的識者、指導者と対話しました。「対話こそ人間の特権である。それは人間を隔てるあらゆる障壁を越え、心を結び、世界を結ぶ、最強の絆となる」と強調し、人が利己的な「少我」でなく宇宙生命に融合した「大我」に立ち、来るべき世紀へ「開かれた対話」に臨むことを提唱し、自ら実践しました。





長年続いた凄惨なアイルランド紛争も対話で解決できたのです。対話こそ、対立抗争する宗教を和解させ、疎遠な教団を接近させ、協力に導くことができる大道です。対話のスタンスは相互主義で、相手の宗教、思想を尊重することが前提になります。これは、異宗教の交流に求められる姿勢です。民衆レベルの宗教間対話を通して、世界平和を実現するために、21世紀を宗教対話、協力の世紀にしなければなりません。 





日本宗教融和のカギを握る教団



日本の宗教のなかで、日蓮宗は独特な立場にあります。過去、主要仏教教団のなかで、日蓮宗は特に有力な宗派だった訳ではありません。しかし戦後、日蓮系の新宗教が続々と生まれ、驚くべき成長を遂げました。いまや日蓮系教団抜きに日本の宗教を語ることはできません。





また日蓮宗は、他宗教と激しく教義論争を行った教団でもあります。仏教には慈しんで人を導く「摂受」と、間違った教えを論破し導く「折伏」という布教方法がありますが、日蓮宗では折伏を強調したのです。






しかし宗教は変化します。改革は宗教の真価があらわれる事象です。最大教団カトリックが、他宗教の価値を認め、協力する方向に転換することにより、世界の宗教が融和へと歩を進める大きな契機となりました。同じように、日蓮思想を受け継ぐ日本最大教団創価学会が、他宗教と対話、交流をめざす方向に転換することによって、日本宗教界も融和の道へと歩みを進めました。池田師は次のように宗教対話を提唱します。





  
「宗教間対話が実りをもたらすためには、互いの教義の比較や優劣を争うことに目を奪われてしまってはいけない。むしろ、現実の社会の問題を解決するためにどうすればよいのかという、問題解決志向型の対話を進めることが大切になるのではないだろうか」




宗教者が教義の違いを克服し、おなじ「人間」として対話し、友情を育み、宗教が協力して世界の問題を解決することを強調します。宗教はそれぞれの方法で人々に救いを与えており、違いはあります。宗教は、人類がかかえる困難を克服するため、「問題解決志向型の対話」に踏み出し、共同歩調を取らなければなりません。





創価学会という巨大教団が宗教の融和、協力を積極的に推進するとき、日本宗教界はおおきな輪を形成できます。そして、世界に尽くすとき、日本宗教が人類の悲願である恒久平和創出を先導することができるのです。    (永田)




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