宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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21世紀のサムライは日本史の異端児から学べ

1.冒険を忘れた日本人


私達は、長く平和と繁栄を享受し、変化を避け安定を求める思考が染みついています。ところが、これは未来の発展の可能性を閉ざすものです。例えば、留学を例に挙げれば、外国で学ぶということは、危険と負担を覚悟し、人一倍努力をして何かを獲得することですが、日本人の海外留学生は年々減少しています。




しかし、韓国人や中国人の留学生は増加しています。両国の青年は挑戦心が旺盛なのです。今の日本人は、冒険、挑戦を避け、若者までも一刻も早く安定した職業に就くのが理想になっています。新卒でなければ良い就職ができないような慣習も、あまりに膠着し、保守的です。30年前までは、確かにあった、開拓精神や起業家精神はなくなりました。



 


「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という諺があるように、何らかの危険や負担を覚悟しなければ物事は前進しません。挑戦に乗り出し、行く手に待ち構える危険、困難を、知恵と力で克服しなければならないのに、初めから安全な道しか行こうとしません。それでは危険の実体も、対処法も分からず、危険を巧みに回避して目的地に到達する能力も身につきません。冒険をしなければ現状維持はできても、大成功や飛躍的発展は望めないのです。





2.日本人の発想はサムライ



日本は、サムライの伝統があり、勤勉で、滅私奉公の精神がありますが、「カタチ」と「ワク」にこだわり、広い世界に出てゆく、世界のよいものを大胆に取り入れる、あるいは新しいことに挑戦する意思に欠けています。もちろん、世界で活躍している人も少なくありませんが、更なる発展を遂げるには、もっと多くの日本人が世界に出て行かなければなりません。





しかし、外国に住み外国人の発想と自分の発想を比べると、嫌でも、自分が「サムライ」であることを実感させられます。外国ではしっかり自己主張をし、物事を大きく把握して、小さなことは後回しにしますが、日本人は、とかく自分の考えを押し殺し、周りに合わせ、細部に神経を使い、物事を大きく把握することは苦手です。陰謀やウソも苦手です。私はアジアの某国の巨大企業で日本語を教えたことがありますが、そこの幹部が、「日本人はウソが付けない」と、スラっと、吐露しました。人は育った所の国民性を受け継ぎ、それを消すことはできません。結局、私達はサムライの弱点を補うしかないのです。





3.日本の異端児・馬子・信長・綱吉から学ぶ



日本人の歴史観の変革が、サムライの「ワク」を越える力になると思います。本書で取り上げた歴史の異端者から学ぶのです。馬子は多神教的世界に大胆に仏教を導入した「改革者」、信長は巨視的なビジョンと行動で日本を中世から近世に転換させた「先駆者」、綱吉は儒教・仏教を強力に奨励し日本人の心を変えた「啓蒙家」でした。彼らは一度も外国を見たことはありませんでしたが、日本の常識とスケールを超えた発想で、大きな業績を残した「世界人」だったのです。





日本と諸外国とのちがいは、「歯車」に譬えれば分かりやすいと思います。諸外国は、普遍宗教や世界的大文明に立脚する「大きな歯車」で、ダイナミックですが、作りがさほど精巧でなく、トラブルで故障することも頻繁にあります。日本は、定められた枠の中で忠実に役割を果たす、「小さな歯車」で、精巧でしっかり回り続けます。例えば、日本の車は燃費がよく、故障しないというのが世界の常識で、日本人の個性が鮮明に反映しています。この2つの歯車は、スケールがちがうので噛み合いません。馬子、信長、綱吉は、仏教、キリスト教、儒教という、世界の「大きな歯車」を日本に持ち込もうと努力した人物たちでした。





今、日本人は、諸国民と噛み合う、「宗教」という、大きな歯車を獲得すべきです。各自が、真剣に宗教を学び、大きな歯車を受容して、世界と協働し、かわりに、日本人の精巧な歯車を提供し、世界の安定と発展に貢献するのです。




日本人にとって苦手なことは、世界の動きを身近に感じること、枠を超えた発想、大胆な改革、価値観が介在する宗教や思想について論じることなどでしょう。3人はその点に関して先覚者で、つよい信念を持ち行動しました。日本人にも、このような「異端的DNA」が引き継がれているのです。





島嶼独立国家の優れた伝統である、平和な王権・天皇と、潔いサムライの精神に、新しい大きな歯車を結びつけ、日本の弱点を補うのです。私達の長所を生かし、世界に出てゆくためには、大きなスケールで物事を考え、宗教や文明についても論じる「世界大の視野をもつサムライ」を目指さなければなりません。それが21世紀を生きる日本人に必要な個性です。
                 (永田)




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