宗教&インテリジェンス(旧harmonyのブログ)

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21世紀、宗教の地殻変動は、福音派、ヒンズー教、儒教から  -プロビデンスによる宗教融和-

宗教のプロビデンス



神は、相互に依存し調和をなす世界を創造しました。しかしなぜか、人間社会は苦しみや悲しみ、恨みが渦まく、不調和な世界になってしまいました。歴史は、そのような人類を救済する過程でした。神の救済プロビデンス(providence: 摂理)は、人類の苦しみをなくし、世界に調和をもたらすことです。このプロビデンスは、すべての宗教の目的に反映し、仏教は、「衆生済度(すべての人を救う)」、キリスト教は、「この福音を全世界に述べ伝えよ」という目的を持ちます。「神・仏-宗教-世界救済」は不可分のものとしてつながっているのです。まず、4つの教団に反映したプロビデンスを見てみましょう。




 真言宗


仏と法界が衆生に加えている不可思議な力を前提と
する修法を基本とし、それによって仏の智慧をさと
り、自分に功徳を積み、衆生を救済し幸せにする。




 浄土真宗


阿弥陀如来の本願力によって信心をめぐまれ、念仏
を申す人生を歩み、この世の縁が尽きるとき浄土に
生まれて仏となり、迷いの世に還って人々を教化する。




 霊友会


在家の叫びで世界平和に貢献する。世界平和に貢献
するには人間が幸せでなければならない。(久保角太
郎師の教え)




 崇教真光


善想念の人類を一人でも多く育て、輝かしい天国文
明づくりに邁進。宗門宗派にとらわれない、宗教を
越えた「崇教」として、すべての人々、すべての国々
が連帯し協力することが可能と信じる。





このように、宗教の究極的目的は、人の心の救いと世界の救済です。あるひとつの宗教が圧倒的な力をもち、その宗教の教えで人類を救えば、世界救済は単純な展開で成就します。しかし神は、ひとつの宗教に支配的勢力をもたせるのではなく、性格の異なる複数の宗教に勢力を分散しました。





そのため世界の宗教勢力図は、宗教が融和し、協力しなければ人類を救済できない構造になっているのです。これこそ、神の歴史的プロビデンスと考えるべきです。宗教が一致するためには、このようなプロビデンスの意味を探らなければなりません。





 地球を受け継ぐのは無宗教の勢力?



そもそも、宗教協力を行っても行わなくても、世界の宗教は運命共同体です。古い殻を破り、新しく生まれ変わらなければ、21世紀の宗教は、世界救済どころか、衰退の道をたどる可能性が高いのです。





前エコノミスト誌編集長アンソニー・ゴットリーブ氏は、『2050年の世界』(英エコノミスト誌発行)で、「宗教はゆっくり後退する」と題し、「2050年には、世界の信仰者の数自体は増えているが、原理主義的勢力は後退し、最終的に地球を受け継ぐのは無宗教の勢力」と断じました。今の宗教は、とうてい21世紀の地球をリードできるような力量をもたないという認識に立った厳しい予想です。





残念ながら、わたし達はゴッドリーブ氏の予想を、一笑に付すことができません。宗教が決して良い状況ではないからです。現代の宗教は明確なビジョンを持たず、大衆と結びつきが弱く、社会に秩序や平安をもたらす確かな役割を果たしていません。そのうえ多くの教団は、連帯し助け合う教団もなく孤立し、発展にも限りが見られます。





すなわち、現代の宗教は、国家、世界のなかで、どんな位置にあり、どのように影響力を発揮できるか皆目分からないのです。分かっている教団がはたしてあるでしょうか。また、各教団は自己完結的に強い信仰があっても、宗教全体はバラバラで、未来の展望も見えない、アノミー状態に陥っていると言っても過言ではありません。これが宗教の実情ではないでしょうか。





宗教は、多くの信者を有し決して弱くありません。それどころか、世界最大最強の社会集団であることは間違いありません。すべては、分裂、孤立していることが問題なのです。宗教は団結し、共同で、人類の難題を解決できる地球大のビジョンを示さなければ、無宗教の勢力に道を譲るしかないのです。宗教協力こそ、21世紀宗教の運命を左右するものです。





宗教はつながっている



ゴッドリーブ氏はまた、「世界における宗教の勢力図が大きく変わるようなことは、現在から2050年までのあいだに、救世主が本当に現われでもしないかぎりない」と、興味深い指摘をしています。これは冒頭部分に現れる言葉ですが、これがポイントです。すなわち、無宗教の勢力が地球を受け継ぐには、「今の宗教勢力図が変わらない」ということが前提になっているのです。





確かに、長い歴史のなかでつくられた宗教勢力図は、容易のことでは変動しないでしょう。しかし世界の宗教者が、超越者の意図を中心とし、「宗教はつながっている」と実感すれば宗教勢力図は変化します。





宗教は、神から個別の使命を負っているのです。そのため、神、人間、家族、自然など、それぞれ強調するものがちがいます。すべての宗教が、固有の要素と長所をもつこと自体に、超越者の深遠な計画を感じざるを得ません。これはまさに、神の歴史的、地域的プロビデンスが現象化したものです。





重要なことは、この個別な性格は、宗教が別々の道を行くためではないということです。宗教が個別の良きものを維持しつつ、大きく統合、協力し、ともに人類を救済することに真の目的があるのです。ですから。「異宗教の交流」は、宗教の存在理由である神のプロビデンスを知ることにつながります。各宗教に秘められた神の全体計画を悟り、宗教が融和すれば、分裂した宗教勢力図は崩れ、世界の宗教は、大きく融和する道に向かうのです。これは各教団の自由な意思による融和であり、各教団を縛る、統合、統一ではありません。





 21世紀の3大宗教群



21世紀、世界の宗教は、「3つの宗教群」に分けられ、それぞれに注目しなければなりません。第1群は、現在、世界に強い影響力を持つ伝統宗教です。まず、アブラハムの流れをくむユダヤ教、キリスト教、イスラム教、そして、仏教です。これらは世界で大きな影響力をもつ宗教です。世界194か国のなかで、121か国はキリスト教が優勢、52か国はイスラム教優勢で、両宗教あわせて173か国にのぼります。ユダヤ教の信者は1300万人程ですが、キリスト教、イスラム教の源であり、ユダヤ人は優秀で、世界の知識、政治、経済などで大きな影響力をもちます。





仏教も、日本をはじめ、東アジアで大きな勢力をもち、着実に世界に広がっており、この趨勢は止まることはないでしょう。第1群は、近代以後、世界の運命を左右した宗教群であり、人類の未来を予測するにも特に注視しなければなりません。





第2群は、伝統宗教のなかで、21世紀に影響力を拡大すると予想される宗教です。プロテスタントの福音派とインドのヒンズー教、そして中国の儒教です。





まず、福音派から見て行きましょう。福音派は、トランプ福音主義大統領の登場で、福音派の人々は活力と使命感を得、今日、世界で最も元気な宗教といわれます。「福音派」は、ひとつの定まった教団ではなく、プロテスタントから興った、熱烈な信仰的情熱をもつ福音主義運動と言った方がいいものです。広義に捉えると世界に数億人の信者を有すると考えられます。特に、福音派に属するペンテコステ派は急成長を続けており、2025年には、信者数が7億8000万人に達すると予想されます。(「世界宣教活動統計」ゴードン・コンウェル・セミナー)





彼らは、トランプ大統領を熱烈に支持し、ペンス副大統領、ポンペイオ国務長官なども福音派です。今や福音派は、アメリカを動かし、世界に大きな影響力を持ちます。また、福音派は、世界で急速に勢いを増す、反グローバリズム運動の先頭に立ち、21世紀の世界を変える中心勢力になろうとしています。





また、2群に属する宗教は、インド発祥のヒンズー教と中国の儒教です。両国は人口超大国で、合計すれば約25億人にのぼり、これは第1群宗教の信者数に匹敵します。歴史的にインドのヒンズー教、中国の儒教は、両国における支配的宗教で、21世紀の宗教の行方を知るには、この二か国の動向と、その宗教に注目しなければなりません。





インドのヒンズー教は10億人が帰依する宗教で、インドは、「神々と信仰の国」といわれる、多神教を熱心に信じる国です。今日、インドは急速に発展しています。インドの発展とともに世界でヒンズー教への関心が高まり、ヒンズー的多神教は21世紀の文明、文化に大きな影響を及ぼすでしょう。





一方、現在、アメリカと中国は激しい貿易戦争を繰り広げています。アメリカの目的は中国共産党を倒し、同国を民主化させることです。共産党が倒れたら、中国人が儒教を中華民族の中心理念に据えるのは時間の問題です。すでに、胡錦涛時代から儒教を復興させましたが、共産主義と矛盾するため、儒教奨励政策を後退させたのです。共産主義の足枷さえ無くなれば、中国は一気に儒教国家に向かうでしょう。そうなれば、儒教は10億人以上の信者を有する大宗教に変貌するのです。






第3群は、19世紀以降に勃興した、数多くの「新宗教」です。全体規模は、1群、2群の宗教と比べると、すべてを合わせても比較にならないほど小さなものです。しかし新宗教は、1群、2群から分かれた教団や、新しい発想をもつ多くの教団をふくみ、多様で、活力をもち、短時間に発展しました。150年ほどで急速に発展した事実は、神のプロビデンス抜きに説明できません。そして現在、確固とした基盤をつくり社会に定着しました。





新宗教は、新しい教義と平和メッセージを提示し、宗教の復興と改革を目指します。さまざまな文明的背景を有し、融和的宗教も多く、世界宗教化した教団も少なくないのです。





何よりも、伝統宗教間でおこなわれた抗争や戦争に関わらなかった新宗教は、宗教対立の解消に積極的貢献ができる立ち位置にある宗教群といえます。神が新宗教に与えた使命は「宗教融和の媒体」、「宗教対立のショック・アブソーバー」機能で、1群、2群を中心に構成される世界宗教文明圏の融和、協力には、第3群である「新宗教」の役割が期待されるのです。





1群の、世界に影響力を持つ宗教、2群の21世紀に発展する宗教、3群のユニークな新宗教が、持てる力を発揮し、共に世界の恒久平和を実現することが、21世紀、神が宗教に課した人類救済プロビデンスなのです。





「為に生きるこころ」で宗教の大交流時代を!



特定の教団が人類を救うのではありません。また、分裂した宗教がそれぞれの救いを人類に与えるのでもありません。宗教が一致し、本質において同一の救いが人類にもたらされるのが神のプロビデンスにちがいないのです。





宗教は、教義のちがいを超越し、共同で正しい価値観と未来ビジョンを示し、苦しむ人々を助け、平和を実現し、地球環境保全をめざすべきです。これは誰も反対しない、人類にとって共通利益をもたらすものです。





たとえば、宗教がひとつになり、人々を感化し、殺人や強姦、誘拐などの凶悪犯罪が根絶できれば、理想世界の実現は時間の問題です。全ての宗教がもつ「愛のこころ」、「殺してはならない」という教えで、人々の心が善化されれば実現は可能です。それは個々の宗教の教義を越えた、「人類の教え」といえるものです。





夢のような話ですが、「自由」や「平等」も人類にとって途方もない夢でした。しかし今日実現できました。世界の平和と、人の善化、貧困の克服、地球環境保護は並行して推進しなければなりません。これらの問題を解決できる、宗教の平和主義、正しい善悪観、施しの心が、宗派の壁を超えた「人類の教え」です。これこそが宗教が共有する本質で、宗教のもっとも重要な共通要素なのです。






宗教には規模の違い、歴史的背景や現実問題に対するスタンスの違いなどがあり、なかには鋭く対立する教団もあります。それらを乗り越えるものが、すべての宗教がもつ「為に生きるこころ」、すなわち共存の思想です。





家族に対するような心で相手の為を思い、異宗教に対する偏見や遺恨を克服し、まず自分から与えるのです。「為に生きるこころ」と同義語である「博愛」、「共生」、「人助け」など、すべての宗教がもつ利他のパワーを発揮すれば、宗教融和、協力は実現できます。





また、異宗教交流は、つよいスピリチュアリティーの高揚があります。交流の背後に、双方の教団を導いた超越者の計り知れぬ心情があるからです。宗教交流は、神が分立して推進したプロビデンスが出会い、長いあいだ分かれていた善なる家族がめぐり合う瞬間です。すべての宗教者にとって、神の大いなる摂理を完遂させる最後のフロンティアは宗教協力なのです。





そして宗教は、新しい救世観を持つべきです。人々を救済できる存在、すなわち「救世主、大預言者・覚者・聖人」などは、一人ではありません。人が「救世主」の真理と愛によって救われれば、その人は「救世主の代身者」になるのです。そもそも、家族、氏族、民族、国家、世界に、数多くの救世使命を担う人々がいなければ、77億にも及ぶ人類の救済は不可能なのです。この発想の転換によって宗教者は、奉仕の精神とともに、世界救済を視野に入れた真の主人意識を持つことができます。





宗教者がこのような積極的救世観をもつとき、宗教は地球を受け継ぐ勢力になることができます。すべての宗教者は、神のプロビデンス的使命を達成するため、心を広げ、「精神の大交流時代」を開くべきです。      (永田)





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